時間：2025年9月2日

世界初の腕時計の起源とその秘話

腕時計、この時を刻む道具は、百年以上にわたる風雪を経てきた。それは単なる道具に留まらず、深い歴史的意義と豊かな文化的内包を担っている。腕時計は人類の精密製造の模範であり、その一つ一つが息をのむほど美しい芸術品と言える。しかし、世界初の腕時計の誕生については、古くから諸説紛々である。宮廷伝説と結びつける説もあれば、その実用性を強調する説もある。だが、どの説にせよ、これらの物語は人々が腕時計に寄せる深い愛情と果てない探求心を如実に物語っている。

1806年、ナポレオンは皇后ジョゼフィーヌを喜ばせるため、職人に命じて精巧な小さな「時計」を特別に製作させた。その設計は巧妙で、ブレスレットのように手首に装着できた。これこそが世界初の腕時計の誕生であった。当時、懐中時計は依然として男性の身分と地位の象徴と見なされていた一方、腕時計は次第に女性の優雅な装飾品となっていった。

余談だが、ナポレオンは当時を代表する時計愛好家であり、その妻ジョゼフィーヌ皇后もまた時計を愛した。2007年、ジョゼフィーヌ皇后の金時計がスイスのジュネーブで行われたオークションで130万ドルという高値で落札された。この金時計は、1799年に皇后が3000スイスフランで注文し、1804年にナポレオンがフランス皇帝として即位した後にダイヤモンドをあしらわせたものである。その後、皇后はこの時計を娘のオルタンスに託した。オルタンスは1802年にナポレオンの弟ジョゼフと結婚した。1806年、ナポレオンはジョゼフをオランダ国王に任命し、オルタンスはオランダ王妃となった。この時、金時計には「H」（オルタンスの頭文字）の文字が刻まれ、皇室の栄光と伝統を象徴するものとなった。

さて、次にもう一つの興味深い逸話に移ろう。ナポリ王妃、つまりナポレオンの末妹カロリーヌは、夫でありナポレオン麾下の名将ミュラとともに、ナポリ王国の統治を任された。このことから、カロリーヌは後世「ナポリ王妃」と称されることになった。彼女もまた、兄ナポレオンのブレゲ時計への傾倒に深く影響を受け、自らブレゲに特注の18金製時計を依頼したのである。

ナポリ王妃、すなわちナポレオンの妹カロリーヌは、ミュラとの共同統治者としてナポリ王国を治めたことで名を馳せただけでなく、ブレゲ時計への特別な愛着でも注目を集めた。兄ナポレオンのブレゲ時計への愛好に触発され、彼女は自らブレゲに特注の18金製時計を発注した。この行動は、後世のコレクターたちにとって計り知れない価値をもたらすことになった。

1810年、ナポリ王妃カロリーヌはブレゲ氏に、特に革新的な時計を二点特注した。そのうちの一つが「ブレスレット型のオーバルリピーター」であった。このデザインは当時の19世紀においては極めて斬新で、画期的な意味合いを持っていた。ブレゲ氏は、時計製作における深い造詣と卓越した創造力をもって、この記念碑的な時計の製作に成功した。それゆえ、この時計は確かな歴史的記録に残る世界初の腕時計となったのである。

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